「零一さん、一緒に帰りませんか?」
[ call ]
2月も末、卒業間近の雪の降る日。
今年のバレンタインデーには手作りのチョコレートを渡した。
そのあとには特に行事もなく……大学へ進学を目指す私には、入試に向けての追い込みをかける時期。
今年はいろいろなことがあった。
2度あることは3度ある…というけれど、正にその通り、彼が私の担任になった4月。
春から始まって、体育祭、合宿、修学旅行、文化祭、クリスマス……。
2月にはもう立春で、また春が巡ってくる。
何度かデートにも誘ってくれたけど、2月に入って、もう誘ってくれなくなった。
私が勉強で大変だろうと、きっと気遣ってくれてるのだと思う。
そんな中、私は放課後先生を誘った。
「そうだな。それもいいだろう」
私は先生の車で家まで送ってもらう。
本当にもう、最後だから。
勇気を出して、声をかけたんです。
「君は…先程、私のことを何と呼んだ」
駆動中、先生が私に言った。
体中の血が、逆流する。
「零一さん……て呼びました」
心臓が高鳴る。
窓から見える、外の景色が流れ行く。
「零一さん」
私がまた同じように呼ぶと、先生は小さく「何だ」と返事をする。
私は大きく息をして。
「私は、あなたの生徒です。でもそれ以上に、私は個人としてあなたを慕っています」
「…………。」
先生は何も言わない。
「――だから、今はもうあなたを先生とは呼びません」
いけませんか?と問いかけると、先生は咳払いをひとつした。
「……その程度であれば問題もないだろう」
車が、停止した。
私は車から降り、戸を閉める前に言った。
「ありがとうございました」
そのありがとうは何に対してか。
自分でもよくわからなかったけれど、先生はあぁ…と頷いてくれた。
あのときの先生の頬が、薄く桜色だったのは……。
気のせいでなければいい。
私は少し隙間が埋まったような気持ちで、家に入った。
END
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後書。
20万HITおめでとうございます!!
感謝と御礼の心をこめて、ちかげさんに捧げます。
今回はいつもと少し違う感じにしてみました。(どこが?)
主人公が先生から零一さんへ呼び方を変えるときの話です。
きっとこの数日後には、卒業式で二人はラブラブ…になるのでしょう!
何やらよくわからんブツですが、受け取って頂けると幸いです。
―晃―