【風邪】



「零一さん、なんだか顔が赤いですよ?熱があるんじゃないですか?」

今日は休日。
いつもの通り、零一さんの家に来た。
インターフォンを鳴らして、零一さんがドアを開けて…ここまでは良かったんだ
けど、なんだか零一さんは熱っぽい。
ためしに額に手を当ててみると、案の定、熱があった。

「熱があるじゃないですか!」

言った瞬間、零一さんが私の方に倒れこんできた。
なんとか支えて、とりあえず家の中に入る。
…入った後は、どうしよう。
成人男性を、一介の婦女子に運べるわけがない。

「零一さん、起きて下さい。私じゃベッドまで運べませんから」

呼びかけると、零一さんは目を覚ました。
私は肩を貸して、零一さんを寝室まで運んだ。

「…すまない」

ぼそりと零一さんが耳元でつぶやくので、少しドキッとしてしまった。
私は零一さんをベッドに寝かせると、おかゆでも作ろうと、台所へ向かおうとし
た。

「待て…どこへ行く」
「台所へ――おかゆ作ろうと思って」

私が答えると、零一さんは迫力のない、キツイ口調で言った。

「必要ない、今すぐ帰りなさい…!」
「でも…」
「『でも』では、ない。帰れと…言っているのだ」
「そんな…!!」

私が何を言っても、零一さんは聞く気が無い様だ。

ここで私にできることは2つ。

一つ.何がなんでも看病する。
一つ.言われた通り家に帰る。

私は迷って後者を選んだ。

「じゃあ帰りますけど、風邪、早く治してくださいね。私にうつされると迷惑で
すから。」
「……。」

くやしいから憎まれ口をたたいてみた。
返事がないので見てみると、零一さんはすでに寝ていた。
私は帰る用意をして、寝室を出た。

扉を閉めて、ため息一つ。

「さみしいなぁ」





『ピ〜ンポーン』

翌週の休日。
インターフォンを鳴らせると、暫くしてから零一さんが出てきた。
零一さんは、少し意外な顔をしている。

「…なぜ来た」

少し雰囲気が重たいのは、この間のことを、零一さん本人も、気にしているから
だと思う。
実際私もショックを受けた。
だからわざと、意地悪く言って見せた。

「風邪、治ったのかと思って。――私の看病、必要ないとまで言ったんですから
、もちろん、治ったんですよね?」
「あぁ、治った。…心配かけて…すまなかった」

それを聞いて安心した。
私はふっと笑って言った。

「心配かけさせたのは、私の方です。いつも迷惑スイマセン」
「…それは――」

私だって、伊達に3年間零一さんを見てきたわけじゃない。
ましてや伊達に付き合っているわけでもない。

零一さんが何か言おうとするのを遮って、私は続けた。

「私にうつしちゃいけないと思って、あんな事言ったんですよね」
「―――。」 

零一さんは赤くなった。
図星の証拠だ。
私はここぞとばかりに追いたてる。

「本当は、風邪がうつったってなんだって、看病したかったんですから」

零一さんは、口元に手をあてて、黙りこくってしまった。
それでも顔はやっぱり赤い。
こんな零一さん、滅多に見られないから嬉しくなった。

いつもは私が負けてる感じ。
でも今日は、なんだか私が勝った気分。



――ただ、それはほんの一瞬。



零一さんはいきなり真剣な顔に戻った。

私を見つめて口を開く。



「私は君を迷惑などと思ったことは、一度もない」



――それははっきりとした口調で…。

あまりに真剣な眼差しで言うから、赤面せずにはいられなかった。




零一さんに勝とうなんて、まだまだ早いと実感した――。




END



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

ヒムロッチは風邪ひかなさそうだ――と、思いつつもありきたりネタに挑戦しま
した。
まぁこれは、二人の心はつながってるわvというシロモノです。(ぇ!)
…ヒムロッチ像…くずさせたかと思われます。

―晃―




晃さんから戴いた、『ときめきメモリアルGirl's Side』小説です!
私の大好きな氷室先生×主人公ちゃんモノ!
風邪ネタですね!?
主人公が風邪をひいた時は氷室先生おみまいに来てくれましたけど、その逆ってあるのでしょうか?(どきどき)
氷室先生が自分の方へ倒れてきたら、是非押し倒し…ではなくて、看病したいですvv(一部腐女子的発言…)
でもほんと、氷室先生にはかなわないですね〜〜vv(*´∇`*)
晃さん、素敵ときメモ小説ありがとうございますvv


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